三人の話は全て同じ

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「ヤットキット紹介所」はグレンとドロウが成人してすぐに、魔導士の免状を取ってから再開した魔導士紹介業だった。 「再開」というのは訳があるのだが、それは後程にしよう。    魔導士紹介所は国からの許可がなくては設立できないのだが、あまり儲けはないので皆が好んでやりたがる仕事ではない。  国にはお抱えの魔導士がいて、そこで全て用事は済んでしまうし。民間の問題も国の司法を通せば魔導士を仲介してくれる。  ならば何故、必要かというと二人は主に勇者の鑑定とその教育に裂く魔導士の手配を行うよう、国から依頼されていた。  自分達でやりたがったわけではなく、ある時二人に白羽の矢が立ったため、こうする将来しか無かったのだけれど。  事は数十年前にさかのぼる。この国で産まれた王子に、勇者の痣がある。魔力も相当なものだということで成人すれば魔王を遂に討伐できるかも…と国は沸き立った。精鋭の魔導士が集められ、各教育係が決められたがその中の「大御所」が重要な事に気付く。   「王子が成人するまで、結構長いな。」と。  魔導士は忙しい。ましてや大御所ともなれば研究熱心な人物も多く、あぶあぶと言ってしばらくは教えごたえのない幼い王子に掛かりきりがもったいなくなってきたのだ。 「幼い王子には、戯れながら魔力を学ぶのがよろしいでしょう。」  魔導士達は揃って王に進言した。  王はなるほどそうかと納得し、魔導士の素質を持つ子どもを探し始めた。そこで目を付けたのがヤットキット紹介所のキヤトとアキトの魔導士兄弟だったのだ。
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