三人の話は全て同じ

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 以前、国に属していた魔導士二人がそこを辞めた後に紹介業をしている。その二人に、幼い同い年の子どもがいるとわかった王は父親と共にグレンとドロウを城へ呼んだ。  まだ寝返りするようになったばかりだという王子の魔力の強さにグレンは驚き、ドロウの背中に隠れたと、後に二人は父親達から思い出話を聞かされた。    王子と同程度の魔力を持つドロウとそれには足元にも及ばない魔力のグレン。だがグレンは魔力を眼で視ることに長けていた。  ドロウが魔力の扱い方を教え、グレンに魔力の視え方を教えてもらえれば申し分なかろうと王は考え、二人を王子の教育係…いや遊び相手に任命した。  二人の父親はこれを光栄と喜ぶような魔導士ではなかった。国立の魔導士集団からはじき出されて民間で紹介所を開業するくらいだ。やはり変わり者だったのだろう。二人の装いを整えて城へ決まった日に送り出すことはするものの、親が城まで出向くことは少なかった。  グレンの父、キヤトは魔王の元へ赴く勇者のために封具を作る職人だったし、ドロウの父、アキトは魔導士紹介所で国には申し立てのできないような小さな仕事を請け負うのに忙しかった。  グレンにも受け継がれた、魔力を視る眼が良かったキヤトは勇者の鑑定も担っていた。そこで勇者の痣を持つ赤子が見つかると、その赤子が成人するまでにその魔力に見合った封具を作り上げ、旅立ちの日に身に着けさせた。 「魔力を封じて魔王の討伐に赴く」この勇者の文化を作ったのはヤットキット紹介所であったと言われている。  魔力は人の痕跡を残す。それを使って、探るも、追うも、使うも、工夫次第。魔力の玄人にはそれを楽しむ者すらいる。  魔力の扱い方もよく知らない、若い勇者がホイホイと城に赴いては危ないでしょうと。幼い時から魔力の制御を教えて、封具でそれを「無いように、隠して行きましょう」と。  勇者として旅立った若者は「そのせいで」帰って来ないのだとは誰も気付かなかった。  
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