三人の話は全て同じ

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「魔王無き世を、作りたかったんだけどね。」  玉座に座る魔王はそう呟いて、背もたれに身を預けて深い溜息を吐く。 「封具を持たせた勇者は全て生きている。生きて帰った者もいるし、そのまま違う国へ行った者もいる。前の魔王と申し合わせて、そうやってきた。だがそれでは勇者の痣は継承され続ける。」  グレンは、だからってね、父さんと膝に手を付いて踏ん張ってみたものの、叶わず。魔王の前にがくりと座り込む。 「なんで魔王になってるんだよ。」  だがその声は少し笑っていた。   「魔王無き世を作るためには、やはり…やはり、魔王を殺す必要があるよね。」  王子がグレンの隣に座り、アキトに問いかけながらゴロリと仰向けに寝転ぶ。グレン、父さん殺していい?いい?と隣に聞く。 「だめですよ。これでも父ですから。」  ドロウはその後ろで、グレンの父さんこんな所で魔王になっていやがったのかと成り行きを見ている。  アキトはそんな三人を満足そうに一人ずつ見ていき、そうだ、待っててね、と玉座を立つ。 「封具を作るのは、魔力がいらないから僕には向いた仕事だった。魔王になってもそれは続けられるだろう。」  アキトが去ると、グレンはそれがすぐに戻らないのを見て切り出す。玉座から目を離さずに。 「グレンが魔王になる?」  王子は呑気に天井を見ながら聞く。 「やめろよ。まずは違う方法を考えよう。」  ドロウが止める。 「僕が魔王になり、僕を倒す勇者の封具を作る。」  グレンが自分を指しながら、王子を見る。 「僕は、ここでグレンが魔王になると、アキトを倒したことになって…勇者じゃなくなるかな?じゃあ、じゃあ、次の勇者を探して育てる。」  王子は自分を指しながら、ドロウを見る。 「俺は…勇者に封具を身に着けさせて…。」  ドロウは自分を指して、次を見るが、そこには誰もいない。 「グレンを倒すために、旅に出させる?」  なんだそれと、いつもの紹介所にいる時のようにドロウは笑ってみた。王子は腹まで抑えて笑っていた。  グレンだけは笑っていなかった。
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