ドロウはなにも知らない

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 カクレと一緒に眠るなんて、幼い時以来だと、いつも触れていた彼の体温を思い出す。朝の早い森を歩きながら夜露に濡れた葉がマントに触れる音を聞く。  ヒュル…ヒュル…と滑るように聞こえたのを合図に鳥も鳴くのを始めたか、それともその時になったからか。  トムは、自分はドロウの元に帰るだろうと今朝はもう、そう思っていた。でも、まだいいだろうと足は北へ向かない。ドロウが待っていないなら、それでもいい。  今は自由なのだ。勇者の肩書も、身体を締め付ける封具も、耳に揺れる耳飾りも、なにもない。耳に掛かる髪の毛もないのだ。でもなと、帰る言い訳を探した。少し伸びてきたと彼に切ってもらおう。トムは動物のような短い髪を引っ張った。  ドロウの予想は大方合っていた。トムの外見は少し変わり、その帰りを待つ人もいた。  彼と交わることはできず、根付いて暮らすことはできなかったけれど。カクレにもドロウにも抱いたことのない、愛しい気持ちをトムは得ることができた。
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