最強の二人

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最強の二人

「待たせたかな?悪い悪い。」  人混みの中から走って来た勇者は頬を上気させて、肩で息をしながらガトラーの隣に並んだ。 「いや、大丈夫。花火はあの橋の上からが良く見えるらしいけど。もう人でいっぱいだな。」  実はガトラーも花火は見たことがない。魔王の城から出て遊び始めたのはつい最近のことなのだ。  この都では、王女がこの月の誕生日に成人し、そのお祝に盛大な祭りが執り行われていた。なんでも王が子宝に恵まれず、産まれる子どもも皆、長く生きられない者ばかりで永らく成人を迎える王子、王女がいなかったらしい。これこそ呪いではないかと、勇者とガトラーは花火を待つ間に意見が一致した。  なんでも、花火が終わった後に、その王女がお目見えするらしい。花火の最中に出てきたら、なにを当てられてもわからないからだ。盛大な火花と音のショーはやっと成人した王女を夜空に連れ去る恐怖となるかもしれない。  だったら、見せなくたっていいよなとガトラーが勇者に聞くと。 「見せなくちゃいけない理由があるんだよ。」  と、勇者は下からガトラーを見上げた。見下ろすその目には下弦の月。綺麗だと思い、これから見る花火が綺麗だろうなと思ったんだよと自分に言い聞かせた。  この都は整然としている。建物は古く、歴史がある都なのだろうが何世代か前の王が戦で焼け落ちた都を再建する時にでも一気に作ったのだろう。  中心部は特に整っている。  なんだか居心地が悪いと、ガトラーは思っていた。もっといびつで、不格好な方が好きだと。
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