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グレンはなんでも知っている
「だめだ。回収、回収。新しいのはもうないから。だって前にここに来る時に、紹介所にあるのは全部持って来たからな。」
昨夜で確信を得たドロウは容赦がない。その横で諦めきれないと目の下を赤くして、カクレが抗議をしている。
「だからって、使ってないのまで持って行くことないじゃない?僕になんかあってもいいの?ねぇトム?」
トムは袋に光る玉を入れながら、ドロウを見る。使っていないのは置いて行ってもいいかと思っているけれど。ここに来る前からやけに息巻いているから、下手にカクレを擁護することもできない。
「だめ。ガトラーになんとかしてもらえ。」
カクレがこんなにも聞き分けが悪いのを、トムは初めて見ている。次はどう出る?と黙々と玉を袋に押し込みながら、カクレの様子を探る。
頭を使ってうまくドロウを丸め込んでみせるか、拗ねるか、わかりましたと了承するか…これはないなと今までのやり取りを思い出す。
「わかりました…。」
カクレは了承して、ドロウの横をあからさまなくらいに肩の力を落として部屋を出ていく。トムは数個残っていたまだ黒いままの玉をマントに隠し、袋の紐を縛った。
「なんのこだわりだよ。あれは。」
「わからないかな、嫉妬ですよ。」
「誰に?」
「グレンだ。みんなして、グレン、グレン。グレンの呪いだ。」
「グレンはもういない。」
「いないから、厄介なんだ。」
トムは袋を背負いながら、ドロウを指さす。
「僕、今日は宿に帰りたいんだ。日の明るいうちに。カクレとガトラーをなんとかする。手伝え。」
昨日は魔王の城に着いてから始めた作業が長引いて、結局は宿に帰れずこちらに留まった。
こちらからそのまま護衛に付いて、北の国へ帰るなんて心残りが多すぎる。だけれどもトムはしばらくは会えないカクレの事も心配だった。
はい、とドロウは咄嗟に答えた。
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