グレンはなんでも知っている

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 カクレは蔵書室に籠もり、書物を開いて文字を追っていた。それは追っても、追っても、頭の中には入ってこない。  それでも追い続ける。  そのうちに心が落ち着いて、並んでいる一つがなんと書いてあるのかわかってきて、それが繋がって文になっていることがわかり、それは意味のある言葉になっていて、今初めてこんなことを知ったと思えてきて…。 「だめだ…。めくっているだけだ。」  カクレは書物を閉じる。しおりも挟む必要がない程、なにも読めていなかった。書物の題名すらわかっていないのではと、背表紙を見る。 「歴代魔王記…なんだよこれ。」  それは他の書物に比べてやけに破れたり、折れたり、シミがあったりと、読み込まれた…というよりも雑に扱われたような印象を持った。  途端に興味を持ち、魔王の系譜からそれぞれの魔王が残した武勇伝を追っていく。そこである箇所に必ず、印が付けられているのを見つけた。 「頭を割り」「頭を掴み」「頭から身体へ」と全て、頭に関する箇所ばかり。それは魔王が勇者を仕留めた時の致命傷であり、まずは頭を狙うのが常套手段と教えられてきたかのような攻撃方法だった。 「トムも、頭蓋骨がみしみしと音をたて、頭が割られるかと思ったと、言っていた。」  カクレは本棚を見回す。その下にグレンが書き記した紙の束が無造作に押し込まれ、その上にまで積み上げられている木箱を認める。 「魔力の源は頭にあるのか?」  グレンの字は苦手だとカクレは一度そこから目を離す。ガトラーが愛おしそうに字に触れたのを見てから、そこにグレンがいるような気がしてしまうから嫌だった。 「だけど、この中に魔力の源について、グレンの気付きがあるかもしれないなら、そんなこと言ってられないよね。」  カクレは自分で、グレンと向き合う覚悟ができた。  
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