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キーンコーン……。昼休みのチャイムと同時にダダダダ…と生徒達が次々に教室から出て行った。買い弁組にとってお昼休みのチャイムとは、売店という戦場で限られた食料を奪い合う争奪戦の開始の合図なのだ。……一方、争いを嫌うお弁当組は自由に席をくっつけて互いの本日の献立を披露し合うという平和な時間を過ごす。ちなみにこの三人はお弁当組。夏樹とメグミがそれぞれ不在にしている生徒の席を椿の席にくっつけながら話し掛けた。
愛
「結局電話くれなかったねー、椿ちゃーん。」
椿
「……ごめん、忘れてた。」
夏樹
「ちょっとちょっと、どうなってんの?」
椿はそんな二人からの圧に耐えながら弁当の蓋を開けるが……二人の方に顔を上げることができず、おかずを見つめながら話し出した。
椿
「お前に気があるって……どういう意味?」
夏樹
「え?好きって意味でしょ?」
椿
「じゃあ、お前にはこの気持ちに応えてもらいたくはない。っていうのは……どういう意味?」
愛
「この気持ちは無視してほしいって意味。」
椿
「……やっぱりそうだよね。」
愛
「あいつにそう言われたの?」
椿
「私には自由で居てほしいって……もっと色んな人に心を開いて、沢山恋愛しなさいって。」
夏樹
「そんな……。」
箸の蓋を開けては閉めて、開けてはまた閉めて……まるで佐古に対する自分の想いのように、開いてはまた閉まる。
椿
「俺はいつでもここに居るからって……。」
愛
「両想いならいいじゃん、卒業までの辛抱でしょ?なのに何であんたは他の男と付き合ってんの?そこが理解出来ない訳よアタシは!」
椿
「亡くなった奥さんの事をね、忘れて欲しく無くて……あいつを取っちゃいたく無くて……だったら、私に誰か他に好きな人が出来れば皆幸せだよなって言うのはずっと思ってて……。」
夏樹
「先生ってだけでも壁があるのに、亡くなった奥さんが居るっていう更なる大きな壁だよね。椿はほぼ初恋でしょ?初心者で最難関の問題って感じだね……。」
愛
「……で?彼氏ってどんな人?」
椿
「ケイタ君って言って、凄く優しい子。」
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