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“佐古先生は、好きな人居るんですか?”
事務室で課題集を作るために必要な教材のコピーを取りながら、授業中に椿から言われた事を思い返す。
…………あのアホ、授業中に……しかも他の生徒達の前で俺にあんな事聞きやがって……何のつもりだ?
自動のボタンを押し、後ろの椅子に腰かけ印刷されていく紙をボーっと眺める……。
“ もう他の人と、しちゃったよ……!”
…………俺にどうしろって言うんだよ。
ピピー、ピピー、という音と共にコピー機の画面に赤い文字でインク切れと表示された。はぁ……とため息をつきながら替えのインクが入った棚を探す。
「……あの及川って奴が邪魔。あいつのこと助けてやってるみたい。」
「やっぱそうだったんだ……だからあいつまだ生きてんだ。」
「てかそいつ、金髪になったよね?」
閉まっているカーテンの向こう側からそんな話し声が聞こえた。出来るだけ音を立てずにカーテンの端を少しだけめくり窓の外を確認するが、そこには誰もいない。
…………確かに声がしたのはこっちからだ。足跡は聞こえなかったからまだどっかに居るはず……。
キョロキョロと辺りを見回すと制服を着た男女が二人、佐古の居る事務室の壁側にしゃがんで寄りかかっていた。顔を確認するためにかがんだり背伸びをしたりするが、二人の顔がこちらを向かない限り断定ができない。せめて学年でもと、二人の履いている上履きの色を確かめる。
…………赤ってうちの学年じゃねぇか。何組だ?取り敢えず写真撮っとくか。生徒の盗撮なんかしたら俺クビかなぁ……いや、どっちが悪いって……このクソガキ共だろ。
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