超・妄想【もう少しだけ】

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「……それでね、もうさぁ……嫌になっちゃってね、だってひどいと思わない?思うでしょ?向こうの言い分もわかるよ、わかるけどさ、そうじゃないんだよ!ねぇ、もっとこう……うまいやり方とかさ、言い方とかさ、あるじゃん!?でも、そんなことばっかり考えてると、あたしも嫌になっちゃってね……。もうさぁほんと、嫌になっちゃってね……ねぇ、聞いてる?」 自分の部屋のベッドでゴロゴロしていた体をガバッと起こす。悩みがあるなら相談にのるよ、と言ってくれた友達にお悩み相談の電話中。話してる途中から友達の返事が聞こえなくなったのだ。 もう一度「ねぇ」と言おうとしたあたしの口が、受話器から聞こえてきた深いため息で止まった。 『あのさ……その話、まだ続く?』 きょとんと目を丸くしたあたしは、ちょっと話が長くなっちゃったかなと、時計をチラ見した。 「あと少し、もう少しだからさ……」 『それ、もう何回も聞いたけど』 電話口でもわかるあきれた声に、ちょっと焦る。でも、今話を聞いてほしくて「でもさ、もうちょっとだけ……」と言ったところで、部屋のドアがノックされた。 「明美!一体何時間電話してるの!」 「げ、お母さん!……もう少しだけだからぁ!」 ドアに向かって声をあげると、電話口からあくびの声が聞こえた。 『もう少し、もう少しって、もう三時間も話してるよ?また明日にしようよ、学校でね』 無意識に時計を見ればすでに日付が変わって午前様だ。あぁ、明日学校で謝って、また話を聞いてもらおう、それがいい……とわかっていながらも、滑り出した口が止まらない。 「ごめん、ごめんね?でもほんと、悩んでて、困っちゃって、あと少しでいいから話し聞いてほしくてさ……それでね」 『明日また同じ話するんでしょ?少し内容絞ってから話してね……おやすみー』 「明美!やめないなら電話線引っこ抜くからね!」 「え!まって!寝ないで?……お母さん!もう少しだけだから!」 友達の方から電話を切ったらしく、無機質なツーツーという音と、お母さんの階段を降りていく足音が静かになった部屋にむなしく響いた。 「もうちょっとだけ、なのになぁ……」 ベッドに仰向けに倒れると、眠気と共に話していた内容がぐるぐると頭の中を回り始めた。 ……なんの話してたんだっけ? *end*
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