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少年は驚きのただ一声を上げる間もなく、膝から崩れ落ちた。
膝がつく寸でのところで両脇を支え、抱き止める。
すっかりと花が散り終えた桜の木の根元へと、少年の体を寄りかからせた。
ふと見た右の手の甲に、おれの役目が果たされた証しがくっきりと浮かび上がっていた。
おれの左頬にも同じように、赤いそれがあることだろう。
あえて見なくても分かる。
彼には見られなくてよかったと、心の底からそう思った。
終
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