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ライカ
誰かに揺り動かされてやっと、俺はいつの間にか眠ってたことに気が付いた。
「ゲゲっ!」
よりにもよってその「誰か」が、お巡りさんだったりする。
中腰で、俺のことを覗き込み睨んでた。
「君、こんな所で寝て――」
お巡りさんの視線がゆっくりと、俺の顔から近くに転がっていた空き缶へと移ってく・・・・・・
「こ、これは酒、ビールなんかじゃなくて、ジュースです!」
慌てて言い終えた後で、ふと思った。
アレ?俺、前にも違う「誰か」に同じようなこと言わなかったっけ?
思い出そうとしていると、頬が濡れ出した。
――涙だった。
涙が、俺の顔の上をダラダラと流れ落ちていった。
アレ?俺、何で泣いてるんだろ?
俺を泣かしたと思ったのか、お巡りさんは早口で言った。
「別に叱ってるわけじゃないよ。こんな所で寝ていると危ないから、早く帰りなさい」
「はぁーい」
俺は返事をして、さっさと立ち上がる。
どうやら木の根元で寄りかかったまま寝てしまったらしい。
涙を手の甲で拭いて、頭の上を見た。
青々とした葉っぱがワサワサと風に揺れている。
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