Ad urbem iridis 虹の都へ

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 先生のそんな声を聞くのはその時が初めてだったので、驚いて黙る僕に先生は重ねて言う。 「これはとても大切なことだ。君は君自身の中に広い世界が、宇宙が在ることに気が付かなければならない」 「先生・・・・・・」  すっかり言い終えると、先生は僕から目を逸らした。 言うべきでない、――言ってはいけないことを言ってしまったと、その仕種が物語っていた。  先生が僕の代わりに見つめたのは、ちょうど満開に咲いている花の一つだ。 僕は先回りをして説明する。 「ジラソレ。花言葉は『未来を見つめて』」  円くて大きな黄色いその花が、僕は嫌いだった。 僕が直接光を浴びることが出来ない、空に輝く太陽にそっくりだと思っていた。  温室には他にもたくさんの花々が咲いているというのに、先生がよりにもよってその花を見つめたことが気に入らなかった。 「――どうせ、もうすぐ死ぬ僕には未来を見つめることなんて出来ないけど」  投げやりになって言い捨てた僕のことが心配になったのだろう。 先生は僕を抱きしめた。 そして言った。 「そんなことはない!んだ‼」  低い声でだがはっきりと断言する先生に、僕は何故?と問おうとして上を向いた。 先生と目が合う。
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