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そう言うリュウタさんの表情も、だいぶユルユルと緩んでいる。
「・・・・・・ずいぶんと時間がかかるんですね」
僕は言った後で「しまった!」と思ったが、もう遅い。
リュウタさんが四合瓶ではなく、僕を見ている。
腕と同じくきれいに日に焼けている顔は、もう笑っていない。
困ったように、すまなそうに濃い眉を寄せている。
「休みだったのに、付き合わせてしまって悪かったな」
僕が思った通り、リュウタさんは謝ってきた。
あわてて否定をしようとする前に、続ける。
「どうしても、間宮君にも飲ませてみたいと思ったんだよ」
「えっ?」
「前に飲んでみたら、とても美味しかったんだ。大将から『ウチの間宮が日本酒を勉強している最中だ』って、聞いたことあったし」
リュウタさんは、シュウさんのことを『大将』と呼ぶ。
無口で、どっしりと構えたシュウさんにはピッタリの呼び方だと思っていた。
僕にはとてもじゃないけど、リュウタさんの真似はできない。
呼び方といえば、「リュウタさん」は名字だった。
ドラゴンの『竜』に田んぼの『田』で、『竜田』と読むらしい。
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