泡立ち、弾ける

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 最初、自己紹介をされた時にはてっきり、「名前で呼んでくれ」と催促されているのかと勘違いをしてしまった。  そう思いながらも、何故だか全然馴れ馴れしい感じがしなくて、とても気さくでフレンドリーな人だと思った。 ――酒が入ると、僕のことを「マミちゃ~ん」と呼んでくるお客さんたちとはまるっきり違っていた。  実は、リュウタさんにだったら、僕は「マミちゃん」と呼ばれてもいいと思っている。 それなのに、リュウタさんは僕のことをきちんと『名字+君』で呼ぶ。  小柄なせいで二十歳を過ぎていても子供っぽく見え、金髪にしているので「チャラチャラしている」と思われがちな僕をちゃんと、一人の店員として扱ってくれている。  だから僕も、リュウタさんに下の名前を訊けないままだった。  店員が、お客さんにそんな個人的な質問をしちゃいけない・・・・・・  ちなみに、今日は定休日だ。 僕はシュウさんに、「出張帰りのリュウタさんが立ち寄るから、店を開けておいてお酒を出してほしい」と。 肴は、前日に作り置いたものだとリュウタさんも了承済みだからと、シュウさんは言っていた。
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