泡立ち、弾ける

5/9
前へ
/248ページ
次へ
 休日出勤なので、追加手当もつく。 僕は、「そんな程度の仕事で、臨時収入が入ってラッキー!」と喜んでいた。 本当に、それくらいにしか考えていなかった。  それなのに・・・・・・ 「わざわざ、その為に・・・・・・?」  ついうっかりと、「僕の為に?」と言ってしまいそうになった。  リュウタさんは、ちょっぴりだけ笑った。 何だか照れている様に見えて、僕も自然と頬が熱くなる。  リュウタさんは僕よりも十才以上年上だと思うが、子供みたいな笑い方だった。 「うん。大将には無理を言って、『店ごと、間宮君を貸してほしい』って頼んだんだ」 「⁉」  一瞬で顔が真っ赤になったのが、自分でも分かった。  それくらいに衝撃的な、リュウタさんの爆弾発言だった。  僕はとっさに深くうつむいて、不自然に赤くなった顔を誤魔化そうとした。 「あっ、ゴメン‼けして間宮君のことを物扱いしたわけじゃないんだ!ただ、――ただ、その、本当にめずらしいお酒だから、ぜひとも間宮君にも飲んでもらいたくて‼」  リュウタさんは普段お酒をどんなに飲み過ぎても、騒いだり大声を出したりするような人ではなかった。 何時も美味しそうに、楽しそうにお酒を飲んで、肴をつまんでいた。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加