泡立ち、弾ける

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 「まさか、リュウタさんも僕のことを・・・・・・?」と、驚く僕に、リュウタさんは笑顔でそう言ってきた。 「何だか、軽い調子(ノリ)だな」とは思ったが、驚きの方が大きかった。 信じられなくてボーっとしている僕の耳に、リュウタさんの声が飛び込んでくる。 「間宮君も、この酒のこと気に入ってくれたんだ‼」 「え?」    酒?  一瞬、本気で「何で、リュウタさんは酒のことを話しているんだ?」と思った。 すぐに、「今、リュウタさんと酒を飲んでいるのだから当たり前だ」と気が付いた。  見れば、リュウタさんはテーブルに突っ伏さんばかりに顔を近付いていた。 バンバンと表面を叩いているので、空になったお通しの皿が揺れている。 「本当に美味しいよなぁ。いやぁー、よかった‼出張後に有給取って、立ち寄った甲斐があったよ!」 「わざわざ、そこまでして買って来てくれたんですか・・・・・・?」  今度は別の意味で驚く僕に、声で分かったのだろう。 リュウタさんは、ガバッと顔を上げた。 笑いにすっかり埋もれていた目が、パッチリと見開かれる。
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