32人が本棚に入れています
本棚に追加
和史と永樹との母親は、同郷で生まれ育った親友同士だった。
二人とも結婚を機にそれぞれ故郷を離れたのだが、帰省の度に子供たちを連れて行った。
同い年の和史と永樹とは小・中学校までは従兄弟か、――何だったら年が近い兄弟かと周りが信じるほどに仲良くなった。
高校は示し合せて、学生寮が在る同じ学校へと進学した。
もちろん、母親たちは二人揃いもそろって大賛成だった。
入った部活は和史が写真部、永樹はバスケットボール部と違っていた。
それでも付き合いは、仲の良さは小さい頃とまるっきり変わらなかった。
和史は車内で突然、謝り始めた。
「遅くまで待たせて悪かったな。バスケ部の後輩たち、喜んでただろ?」
「あぁ」
短い返事の後に永樹が言い足す。
声が苦く笑っている。
「OBの俺本人が来たことよりも、俺が寄贈した備品に喜んでた」
釣られて和史も苦笑した。
「『プロになったら備品を寄贈する』って伝統を守るのも大変だな。それで、何を贈ったんだ?」
永樹から和史へと連絡があったのは、つい一週間ほど前だ。
やっとレギュラーメンバーに選ばれたから、今度『OB訪問』をする。
おまえも一緒に来ないか?という内容だった。
最初のコメントを投稿しよう!