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永樹の誘いは、和史にはとてもうれしかった。
しかし、その日は、――つまり今日はどうしても外せない依頼先との打ち合わせが入っていた。
直帰をさせてもらえたが、母校に着いた頃には午後の遅い時間、夕方近くになっていた。
とっくに『OB訪問』が、――自分の用事が終わってもなお、永樹は体育館にただ独りきり残っていた。
和史を待ってくれていた。
それも又、和史にとってはとてもうれしかった・・・・・・
和史と永樹とは大学も一緒だった。
共に付属へと進んだ。
大学卒業後は和史はデザイン事務所へ、永樹はバスケットボールの実業団がある企業へとそれぞれ就職を果たした。
子供の頃よりも遠く離れて暮らすことになってしまった。
「目録。――つまり現金。それが一番役立つだろ」
永樹はまるっきりどうでもいい様に、自分が贈った記念品をそう言い捨てる。
ぶっきらぼうな口調は照れている何よりもの証拠だ。
和史にだけには分かった。
だからあえて、
「言えてるな」
としか言わなかった。
「プロと言ってもしょせんは実業団、会社員だからな。給料からどうにか捻り出したんだぜ」
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