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口ではそう告げているものの、入社した一昨年ではなくレギュラー入りした今年に『OB訪問』を行なったのは永樹なりの矜持なのだろう。
すっきりと整った顔付きな上に高身長でもある永樹は、とかく外見で判断されがちだった。
周囲からは何でもそつなくスイスイとこなすと思われていた。
永樹はそんなに要領の、調子のいい性格ではない。
むしろ不器用で、人一倍努力家だ――。
昔から一緒に、一番近くに居る和史だけは知っていた。
よくよく分かっていた。
永樹が海岸を見下ろせる駐車場に車を停める。
さっさと車から降りた永樹は助手席側のドアを勢いよく開けた。
「永樹?」
「急ぐぞ」
和史の左腕の付け根を永樹はつかみ、引き上げた。
永樹に引きずられるがままに和史は海岸へと下りてきた。
「永樹、一体・・・・・・」
もう一度名前を呼んで問いかけようとした和史から、永樹は黙って視線を前へと滑らせた。
目で促された和史が見るとそこには――、今まさに水平線の下へと姿を隠そうとしている太陽、夕陽が在った。
永樹が右を、和史の方を向く。
「おまえ、よくここで夕陽の写真を撮っていたよな?」
「あ、あぁ・・・・・・」
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