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和史は胸元で構えたままのカメラへと視線を落とし、言った。
「俺が夕陽をいつも撮っていたのは、おまえと一緒に見ていたからだ」
今は目の前に居る永樹の顔をまともに見れなかった。
和史が永樹とここに来ていたのは、決まって永樹の部活がない放課後だった。
それでも、辿り着く頃にはいつも夕方近くになっていた。
だから、夕陽を撮ることしか出来なかった。
本当は・・・・・・
和史はうつむいたままで『告白』をした。
「本当はいつも、おまえのことを撮りたいと思っていた」
「えっ?」
和史に代わって、今度は永樹が絶句する番だった。
「でも、そんなことしたら『変な奴』だと思われるかと思って、出来なかった」
もっとはっきり言えば永樹に嫌われ避けられてしまうと、和史は怖くて仕方がなかった。
だから、永樹と一緒に見ている夕陽を写真の中へと封じ込めていた。
夕陽は、永樹の身代わりだったのだ――。
永樹の右手が和史の肩に乗せられる。
反射的に上げた和史の顔の目のすぐ下、頬を永樹の左の手のひらがすっかり包み込んだ。
「レギュラー入りしたから、今、やっとおまえに言える」
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