「フォーカスライト」

9/10
前へ
/248ページ
次へ
 ごつく、硬いバスケットボールを掴み叩いて自由自在に操る永樹の手が、永樹の顎をまるで壊れ物の様に柔らかく支える。 「和史、いつまでも一緒だ」 「・・・・・・」  永樹からあまりにも思いがけないことを言われ過ぎて、続けて和史は黙ることしか出来ない。    和史の沈黙を永樹はどう受け取ったのだろうか?  和史の頬から手を退け、一瞬だけ目を伏せる。 左肩の上の手はそのままだ。 真っすぐ和史を見つめ直し、永樹が告げた。 「――いや、俺がいつまでもおまえと一緒にいたいんだ」 そこで一拍、永樹の言葉の間が空いた。 「和史、俺と一緒にいてくれ」 「・・・・・・」  和史はなおも黙り続けている。 永樹を焦らしてやろうという気は全くなかった。  一度は胸元まで下ろしたカメラを再び構える。 何とか笑って、永樹へと掲げて見せた。 「俺が最後までお前を撮り続けるよ」 「えっ?」  またもや永樹が絶句する。 レンズ越しにではなく、そのままの目を向けた和史が続ける。 「俺は昔っから、いつでもおまえの一番のファンだと思っている。どこまででも追いかけていって撮ってやるからな‼」 「・・・・・・」
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加