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体の節ぶしが軋み痛む。
けして年齢のせいだけではないと、新山は思いたかった。
――リビングのソファーで寝たからだ。
より正しく言うのならば、無理矢理に体を横たえたからだ。
結局、まともに眠ることが出来なかった。
大きく伸びをすると、まるでそれが合図のようにあくびが飛び出してきた。
新山がほぼ徹夜状態なのは、鳥居の仕事が長引いたからではない。
新山は事務所が副業禁止なのを表向きな理由にして、鳥居からの謝礼の類を頑なに断っている。
交通費すら自腹だ。
その代わり、仕事の後の打ち上げ代は全て鳥居持ちだった。
弱いくせに酒好きで笑い上戸の、まるっきり手放しな鳥居の笑顔を見るのが新山は好きだった。
それが自分だけに向けられているともなれば、なおさらにだ。
――いや、鳥居の顔だったら多分どんな表情だって好きだろうと、新山は信じている。
好きな人間の顔だから、好きに決まっている。
仕事が無事に終わり、設けた打ち上げの席ではもてなす側の鳥居の方が決まって新山よりも先に潰れた。
行きつけの居酒屋からここへと鳥居を引きずり無事に帰って来るまでが、『仕事の手伝い』だと新山は見做していた。
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