「マジックアワー」

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   それはいい。 そこまでは、いい。 手間は手間だが、ただそれだけだ。 大したことではない。 そう自分へと言い聞かせて、新山はせいぜい溜飲を下げる。  新山が問題視するのはその後の鳥居の言動、――文字通り言葉と行動とだった。 鳥居は寝入る時に決まって、新山へと「おまえも一緒にベッドで寝よう」と言ってくる。 「ソファーじゃ体が痛くなるだろう」と、なおも言い募ってくる。  鳥居が使っているベッドはセミダブルだった。 新山と鳥居との体格は共に中肉中背だ。 特に高身長というわけでもない。 二人して一緒に寝ようと思えば、出来ないこともなかった。  物理的には可能でも、新山の精神的には不可能だった。 酔っ払いが他人(ヒト)の心配をしている場合か!と、新山は実に腹立たしく思う。 全く――、『可愛さ余って憎さ百倍』とはこのことだ。  そんな心理状態ではどれ程疲れようが酒が入ろうが、到底眠れるわけがなかった。
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