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空はすぐには明るくならない。
太陽の出現を迎えてもしばらくは、――数十分間くらいは夜と朝との狭間をゆるやかに揺蕩っている。
下方のオレンジ色の光とまるっきり対照的な上空の色に、新山はしばし目を預けた。
「ブルーアワーか・・・・・・」
空が濃い青色となることから、日没と日の出直後との時間帯をこう称する。
以前、フランス語表記の『 l'heure bleue』を仕事で用いたことがあったので憶えていた。
発音のし方はすっかり忘れてしまったが。
連想で、他の言い方も併せて思い出した。
「――いや、マジックアワーだ」
そっちの方が断然相応しい。
ピッタリだ。
思いも寄らない、何かとても素晴らしいことが起こりそうな予感がする。
新山は短い『魔法の時間』に、コーヒーを味わう。
マグカップの中身が空になる頃には夜は完全に消え去り、朝への入れ替わりが済んでいた。
今日は土曜日で休日だったが、パンツのサイドポケットへと仕舞いっぱなしにしていたスマートフォンを取り出しチェックをした。
「おっ」
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