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そんな武内が昨日、出先から直帰をした。
何でも、母校である高校を訪ねる幼馴染みと会うのだという。
実は以前、新山は職場の飲み会で武内から「幼馴染みのことが昔から好きで、――ずっと恋をしている」と、告白されたことがあった。
その幼馴染みの名前が確か、『永樹』といった。
何故、そんな大事なことを自分へと打ち明けるんだ?と、新山は半ば疑問に思った。
その一方で、もう半分はすんなり納得をした。
武内には自然と伝わっていたのだろう。
新山が自分と同じように、他人はおろか当の本人にすら知られてはいけない恋をしていることが――。
新山も又、武内から発せられる共感を感じ取っていたのだ。
ひそかな片想いの相手でもある幼馴染みと会うのが約一年振りだと、新山は聞き及んでいた。
だから、どうしても武内を間に合わせてやりたかった。
「そうか――、よかったな!おめでとう!」
新山にとって武内は会社の後輩で部下であり、歳が離れた仲間で友人でもあった。
心の底からの「おめでとう!」を言うことが出来た。
メッセージに添えられていた写真は、幼馴染み同士から晴れて恋人同士へとなった二人が観た景色に違いない。
水平線のオレンジ色と、その上に広がる濃く淡い空の青との対比が目にも鮮やかだ。
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