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武内の趣味がカメラ、いわゆる写真撮影でゆくゆくは専門の道へと進みたがっていることも新山は知っていた。
本当によく撮れていると、素直に感心する。
写真を眺めていた新山は、ふと気が付いた。
日没と日の出直後との時間帯をこう称する。
「あぁ、まさに『魔法の時間』だ――」
武内とその幼馴染みとはその時間に、文字通り『魔法をかけられた』のだ。
新山の感心は感動へと変わった。
新山はふと苦笑した。
年甲斐もなく夢見がちな考えだと我ながら呆れる。
しかし、そう思えて仕方がなかった・・・・・・
苦くだが、知らず知らずのうちに笑っていた顔のまま新山はスマートフォンを仕舞い込む。
閉じた目に、先ほどここで観たばかりの「マジックアワー」が映し出された。
今日も又夜を迎える前に、その時は必ずやって来る。
陽は昇り、落ちて又元のところへと還っていく。
以前、「太陽の下に新しいものはない」という言葉を聞いたことがあった。
鳥居とのことも、何も昨日今日始まったばかりの「新しいもの」ではない。
新山はそう思い、目を開けた。
すっかり朝の顔となった空の青さがただ、眩しかった。
今日は昨日よりもずっといい天気になることだろうと、信じて疑わなかった。
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