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ベランダからリビングへと戻る。
途中キッチンへと立ち寄り、新山はマグカップを丁寧に洗った。
自分の記憶の中の鳥居が使っていたマグカップを――。
時を『今』へと進めて、さらにその先へと自分から進んで行ってみようと新山は決めた。
先ずは手始めに、鳥居が寝ている部屋へと行くことにした。
まるっきり昨夜の『延長線上』でベッドの中へと潜り込んだら、鳥居は一体どんな反応を見せるのだろうか?
慌てて目を覚ますのか、それとも・・・・・・
文字通り見ものだと、新山は独りひっそりと笑う。
でも、いきなりそんなことはしない。
分かっている。
全く、血気盛んな若者じゃあるまいし。
そう思った途端、新山の笑いに苦いものが混ざった。
今さらながらにブラックコーヒーの味が口の中によみがえってきた。
まぁ、したとしてもせいぜい寝ている鳥居の鼻をつまんで起こすくらいだな――。
それでも新山には十分、自分も確かに『魔法をかけられた』と感じることが出来た。
終
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