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『竜の蘖』を人の身の上で目にすることは、極めて希だった。
その『奇跡』と出逢う以前から、青年イドリスは稀有な存在だった。
彼は紋様を持って生まれてきた。
白に近い銀の髪に同じ色合いの目、褐色の肌は北方ではけして珍しい外見ではない。
しかし、左の腕の上に肌よりも濃い色ではっきりと刻み込まれているのは彼だけのものだ。
勇者の一人に連なる証しだった。
紋様はその形から『煌めく剣の焔』と呼ばれ、そのままイドリスの二つ名ともなっている。
勇者の一人として生まれついたイドリスの使命は『善悪の知識の木』の実を手に入れることだった。
その木は北の果ての窮みに在る『集会の山』の頂に生えているという。
竜レヴィアの巣、棲み処の山でもあった・・・・・・
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