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竜と人とはけして主従にならない。
竜が人に従わないのと同じく、人も又竜に屈しなかった。
だからといってイドリスのあの言い様は如何なるものなのかと、中身は世界の創まりから生きている竜のままのレヴィアは嘆く。
「俺ら親友だろが」
親友とは「お互いに信頼している、仲の良い友人」だと見做しているレヴィアには大いに疑問だった。
これはレヴィアの経験ではない。
単なる『知識』だ。
『善悪の知識の木』に成っていた実を食べたその時から、レヴィアは世界で唯一匹だけの存在――、竜だ。
昔から今に至るまで、ずっと独りだった。
無論、友もいない。
イドリスに言われたレヴィアは問い返す。
「いつから親友になったんだ」
「俺がおまえを救けた時からだ」
「・・・・・・」
文字通り髪の毛一本挟み込む隙間もなく、イドリスは答える。
『竜の蘖』と化したひ弱なレヴィアの体へと、峻険な『集会の山』の雪風は情け容赦なく襲いかかってきた。
よくよく気を付けていたのだが、遥か下遠く彼方まで飛ばされ流されてしまった。
酷く傷付き、弱って横たわっていたところをたまたま通りかかったイドリスに見出されたのだ――。
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