物識り竜のひこばえは天然勇者にほだされる

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 北方とはいえ、『集会の山』が在る地よりはまだまだだいぶ南だ。 未だ積もる雪も少なく、所どころに地面が顔を出しぬかるんでいる。  レヴィアは泥を避けつつ進んでいたので、竜の小さな足跡が曲がりくねる小さな道を作っていた。  イドリスが自分の前を歩くレヴィアへと先回りし、しゃがみ込んだ。 そして右手を差し伸べる。 鱗と同じ青みがかった氷色の竜の目が、下からイドリスを射抜く。 「飛ぶから大事ない」 「もうすぐ林に入るぞ。枝葉を避けて飛ぶのは難儀だろう」 「・・・・・・」  青年の右手は、二の腕まで海獣の脂で(なめ)し固めた手甲に覆われていた。 幼生とはいえ鋭い竜の爪も、だろう。 それはレヴィアにも「分かる」  だがしかし――。 「ほら」 「⁉」  ためらっている内に翼が生えているすぐ上、首の付け根をイドリスに掴まれ摘み上げられるとは「分からなかった」 そして、曲げた肘の上へと乗っけられる。  イドリスの左手は全くの素手だったが、細かいレヴィアの鱗をかった。  乗せられてしまったのならば致し方がない――。 レヴィアは渋しぶ大人しくイドリスの腕に留まった。 「疲れないか」 「レヴィアは軽いから平気だ」  
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