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柄から手を退けたイドリスは再び笑っていた。
今度はほんの微かな笑みで、口の端を持ち上げているだけだった。
「大丈夫だ。俺には親友がいる」
きれいに澄み切った銀の湖の如き目がレヴィアの氷色の目を、顔を真っ直ぐと映し出した。
「・・・・・・」
竜の幼生は勇者の左肩に居てじいっと黙り、考え込む。
自分は『竜の蘖』だったからこそ、イドリスに見出され救けられた。
唯独り切りだったのに、イドリスが言うところの『親友』となった。
そして、今はこうしてイドリスと一緒に旅をしている・・・・・・
今の自分は『竜の蘖』という呼び名の通り、芽吹いたばかりの新芽の如くとても小さくて弱いとレヴィア自身も「分かっている」
しかし、イドリスの肩にも軽々と乗ることが出来る『今』はとても幸せだと思った。
これが何故にだかは、今のレヴィアには未だ分からない――。
終
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