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Ad urbem iridis 虹の都へ
僕は、世界の『秘密』を知ってしまった。
三ヶ月前、新しく僕の担当になった先生とは初めて会った時から不思議な感じがしていた。
まるで、昔大好きだったけど忘れてしまっていた映画を又観た時の様な、とても懐かしくて温かい感覚だ。
先生は僕の父親にしては若く、兄にしては離れすぎている年齢の男性だった。
眼鏡の奥で控えめに光る目が、とても優しい。
治療が難しい病気で気分が落ち込みがちな僕を何時も、――いつでも励ましてくれた。
僕は先生の前では、全く嘘が吐けなかった。
どんなにうわべだけの言葉を尽くしてみても、先生に目を見つめられたら最後、僕の心は見透かされてしまう。
仕方なく正直に先生にそのことを告げた。
すると先生は、
「目と目を通してつながっているからだよ」
と、答えた。
「君はおかしいと笑うかい?」
そう続ける先生がもう、朗らかに笑っていた・・・・・・
僕と先生とはある日、病院に在る温室へと散歩に行った。
本当は研究用の施設だったが、外へと出られない僕は特別に入ることを許されていた。
僕が植物が、特に花が好きだと話すと先生は、
「もっともっとたくさん勉強するように」
と、強い口調で言った。
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