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螺旋階段を上り、広々とした廊下を歩いていくうちに、遠目から顔だけを斜に出し、興味深そうにこちらの様子を窺う使用人たちの姿が浬の視界に入った。
が、息を凝らすようにじっと見つめてくるだけで、触らぬ神に祟りなしとでもばかりに誰一人として近寄ってこない。
どうやら本邸へ戻ることに至った経緯は親族だけに留まらず屋敷に仕える使用人たちまでにも広く知れ渡っているらしい。
秋吉といい、姉といい、どこまでもお人好しで同情心に富んだ人たちなのか。
けれども自分は情けをかけてもらえる立場の人間ではない。
もっとも、大切な彼女を裏切るような形で決別の道を選んだ自分には、そんな資格すらないのだから。
ひと騒動を起こした次男坊が帰ってきたと、好奇な眼差しが無遠慮に注がれる中、それにあえて気づかないふりして自室へ姿を消した浬は、京都のマンションを引き払う数日前に、業者へ託した荷物が届いてあることに気づいた。
目的の品の前に立ち、膝を折って姿勢を低くする。長期熟成型ワインセラーのガラスドアを慣れた手つきで解除すると、伸ばした腕で古酒を何本か取り出した。
もともとはワインセラーと銘打っている逸品だが、実際に保管されてある品物は日本酒だ。
高度な冷却力や断熱力をも搭載した万能セラーで、一度ピッチから液体の温度調節が可能なうえ紫外線カット率も九九%以上と日本酒の保存にも適している。
シャンパーニュのような太いボトルだけでなく、下段のラックを外せばマグナムボトルや一升瓶も収納できるため使い勝手がよく重宝していた。
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