おじいちゃんの宇宙戦争(仮)

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おじいちゃんの宇宙戦争(仮)

 楽しみにしていた土曜ロードショー、物語の中頃に差し掛かった頃、いつもは寝てるはずの曾祖父(ひいじい)ちゃんが起きてきた。 「じいちゃんこんな時間にどうしたんだよ?」  曾祖父(ひいじい)ちゃんは大画面テレビの前にどっかと腰を下ろしおもむろに話し始めた。 「あの時は大変じゃったぁ…」  曾祖父(ひいじい)ちゃんは若く見えるが100歳を超えているらしい、らしいと言うのは戦争中に戦地の真っ只中で記憶を失ったそうだ、部隊は全滅、かろうじて生き残ったものの焼け出され、素っ裸で彷徨っていたところを敵兵に保護され、そこで暫くごやっかいになっていたそうだ。  戦時中の話は覚えていなかったが、幸か不幸か最近ボケ始めた曾祖父(ひいじい)ちゃんは、戦争中の戦いがどんなに悲惨だったかをポツリポツリと話すようになっていた。  多分テレビでやってる宇宙戦争のドンバチが記憶の扉を叩いたのだろう。 「ワシはハイスクールの頃ケンドープレイヤーじゃった、他の生徒に比べフィジカルに恵まれたワシは真っ先に徴兵されたなぁ」  敵地で暫く過ごした記憶が混ざって、昔話をする時の曾祖父ちゃんはインチキ英会話スクールの講師みたいな喋り方になる。 「訓練中はそりゃあ過酷なもんじゃった、ハイスクールではそれなりに鳴らしたもんじゃが、やっぱり兵隊さんはガッツが違ったのぅ、中でも教官は別格に強かった、何度もコテンパンにされたの、こっちがギブアップしても許してくれんのジャ」  昔話をする時の曾祖父(ひいじい)ちゃんは、時たま眼光が尖くなる、平和な時代に暮らしている俺はその目が少し怖かった。 「単身敵地に放り込まれたときは生きた此地がしなかったが、ワシのセイバーは輝きを増し、敵のバレットを弾き返したもんじゃ」  しかし、いくら平和な時代と言っても曾祖父(ひいじい)ちゃんの話は盛りに盛られている事くらいは分かる、テレビに出てるSF映画じゃ在るまいし刀で弾丸を弾き返すなんて、大ボケもいいところだけど俺はふんふんそれで?なんて真面目に聞いてる風を装う。 「一兵卒のワシらはどんなに敵を倒しても、また次の戦場に飛ばされるだけで、国には帰れんかった…そのうち雲行きが怪しくなってきて、ワシらは特攻を命じられた…ちょうどビジョンに映ってるあんな感じじゃったなぁ…」  曾祖父(ひいじい)ちゃんが指差す大画面テレビでは、レーザーブレードを携えた剣士達が、数万の軍勢に囲まれながらも奮闘するシーンだった、思い出は美化されると言うが流石に盛り過ぎだろう。 『オマエが深淵を覗く時…』  シーンが代わり、主人公が敵幹部との会話のシーンで俺は耳を疑った。 「『深淵なんぞ覗いている場合ではない…』教官もよく言っていたのぅ」  曾祖父(ひいじい)ちゃんこの映画知ってたのかよ…
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