妄想漫才

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妄想漫才

「なぁ、おれの勤め先、服装自由やん?」 「知らんけど、そうなん?ええな」 「良い事あるかい、大変なんよ逆に」 「なんで?」 「毎日服装考えんのめっちゃしんどいねん」 「あ〜わかるわかる」 「自由が逆に苦しめてんねん」 「相変わらず大袈裟やなキミは、そんで?」 「んでな、この前パンイチで出勤したんよ」 「自由すぎるやろ、あホかお前?」 「あんまほめんなや。照れるわ」 「ほめてへんし、てか、スマホとか財布とかどしたん?」 「ちゃんとポッケにしまってました」 「パンイチなのに?何処にポケットあんねん?」 「ポッケくらいあるに決まってるやろ?一万円の高級ブリーフぞ?」 「一万て…嘘こくなや」 「嘘ついたことないわ、生まれてから一度も」 「それがそもそもうそやわ」 「なんや、パンツ一枚も疑ってるんちゃうやろな」 「それは信じる、それで?」 「それは信じるんかい…あ、マスクはちゃんとしてったで」 「パンツとマスク!」 「サングラスもしてったで」 「パンツとマスクとサングラス!お前、ど変態やないかい」 「ムカッ、カッコいいやないかいレイバンやぞトム・クルーズがしとったやつ」 「お前はレイバンに謝れ」 「何でや俺のほうが似合ってるやろ?」 「トム・クルーズにも謝れ」 「歩き方も、こ〜…もはやパリ・コレやで?コレ・パリ・コレやで?」 617240ca-a1ca-49dc-8eb9-edcfdd4e8deb 「なんで言い直した?、パリ・コレの人らに謝れや」 「なんでや、パリ・コレの人らが謝ってほしいくらいやで」 「意味わからん、そんなガニ股でよーゆーたなぁ?」 「モデル歩きくらいしとるわ、なめんな」 「何ゆうてんの、きみ。そもそもパンイチで電車乗れたんか?」 「乗れんかったから歩いて出勤したわ」 「歩いて?」 「モデル歩きでな」 「家から?」 「いや、それがな聞いてよ」 「聞いてるがな」 「朝のヨーグルトが体に良いってんで朝、ヨーグルト食べたんよ」 「うん」 「したら会社まで二駅って所でゴロゴロ〜っと来てな」 「うん」 「電車降りたらホームにトイレ無いから、駅の外のコンビニまで行ったんよ」 「うん」 「出てきたら外が騒がしいから見に行ったら何と子どもが溺れててん」 「大変やないかい!それで…まさか…?」 「ざぶ〜ん飛び込んでぱ〜って助けたのよ」 「お前が?」 「俺が」 「嘘つけ!?」 「ほんまやて、ずぶ濡れになったから全部脱いでんねんこっちは」 「お前…」 「会社ど〜しようかな〜?って思ったけど、あ〜せやせや俺の職場、服装自由やったんや〜思てな」 「お前…」 「脱いでるうちに、何やこれが自由か〜思てな」 「お前…」 「ありがとうございます〜って言ってんのをええからええからとか言ってな」 「お前…」 「買ったばかりのマスクして、上着のポッケからレイバンだして…」 「お、お前…」 「バッって職場に向かってん」 「うん」 「モデル歩きでな」 「モデル歩き好きやな!」 「でな〜悲しいお知らせがあんねんけど…」 「どした急に」 「キミと漫才するの今日で終わりにしよか?と思って…」 「エエやないか、終わろう」 「…」 「…」 「何でとか聞かんの?」 「聞かんよ」 「…」 「…」 「もっと興味を持て!俺に!俺という生き様に!」 「分かった分かった、ったく面倒くさいやっちゃでホンマ、でどした?」 「俺モデルになろうと思って」 「なれるかいな、モデルに謝れ」 「いーから、俺モデル歩きするからちょっと見て〜な?」 「分かった分かったから引っ張んな!袖を!」 「ええか?歩くで〜」 「…」 「何か言えや!」 「何を言うことがあるのよ?」 「色々有るだろ!じゃあ俺が何か言うから、代わりに歩いて」 「俺が?」 「そう」 「…」 「違う!もっと背筋伸ばして、足は一直線に、下見ない!前見て前!ま〜え!」 「ちょっお前…」 「ハイ!最初からやり直し!」 「やり直してお前…」 「違う!もっとケツをプリッと!そう!」 「い〜よ〜、キレてるキレてる、はいそこでターン!」 「仕上がってるよ〜仕上がってるよ〜」 「それ、掛け声違くない?」 「余計な事言わない!」 「だいたいモデル歩きしたいだけやん、勝手にすればいいやん?」 「あ〜勝手にさせてもらうわ、キミとはこれでサヨナラやな!」 「お〜勝手にしたらええがな、帰れ帰れ」 「帰るわ!」 「「モデル歩きでな!」」 ba599c9e-dbd8-4d76-8724-3c4b12648687 「も〜え〜わ!」
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