飼うことのできない猫

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飼うことのできない猫

つい先程の事である 奥の部屋で黒猫が鳴いていた 私が部屋に入ると窓の外を眺めながら 黒猫が鳴いていた 私は「おいで」と言ってチチチッと 呼んだ 黒猫は窓の側から私の方に来た ゴロゴロと喉を鳴らして 私が差し出した指先に頬を寄せる 私が出しているだけの指差に 額や顎の下を自ら押し付けて 黒猫はそのうちにはたと気がつき にゃおんと鳴いた 猫の言葉は分からないけど 「あなた誰?」 とでも言ったのだろう 先程まで自らすり寄ってきた指先から 少し離れて私を見ている ウウウと弱々しい威嚇をする黒猫に 指を近づける また、にゃおんと鳴いた 「やめて…」 引っ掻いたりはしなかったけど 部屋の隅に行ってうずくまった 彼女は元の飼い主に捨てられたのだ 縁があってウチに来たが ウチには既に三匹のネコが住んでいる 他の猫たちと仲良くならなければ ウチに住まわせる訳にはいかない 7/15 追記 部屋の隅でうずくまる黒猫は指を近づけると嫌そうな顔をするけど 部屋を出る時に一瞬だけ悲しそうな顔になる 他の猫は知らない猫の匂いに落ち着かないみたい 7/16 追記 部屋の隅から出てくるようになった
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