hero

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 少し歩くとすぐに栗の木が見えてきた。地面に落ちているイガグリから動物に食べられていないものを見つけて、両側を足で踏みイガの部分を剥く。  すると中からつやつやとした茶色い栗が顔を出すので、用意していた火バサミで取り出して袋に詰めていく。  落ちている栗の分だけ同じ作業を繰り返しつつ、アマネは周囲も確認した。特に魔獣の影は見当たらない。  目撃情報があったのは車でもう少し先へ行った所なので、この辺りにはいないのかもしれない。  手持ちの袋がいっぱいになった所で口を縛って用済みとなった火バサミと一緒にリュックに詰め込むと、アマネはまた山の奥へと歩き出した。  栗の次はアケビ、それに山椒もあったはず。そこまで採ったら崖が見える開けた場所に着くので、そこで一息入れてから車に戻ろうと考えていた。  車で見ていた景色と同じように、アマネが歩いている場所も赤や黄色に染まる木々が多かった。  気候も穏やかで丁度良い。たまに落ちてくる紅葉を眺めていると心まで落ち着きそうな。そんな心地だった。
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