prologue

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 手持ち無沙汰にカーテンの向こう側を眺めていると、テレビの画面がニュースキャスターから空港の風景に切り替わる。どうやら遠征に出かける様子を生中継しているようだ。  何十台ものカメラのフラッシュが閃く中で、十数人の男女が颯爽とターミナルを歩いていく。  ある者は凛々しい顔で、ある者は笑顔で、様々な顔をしている彼らは、しかし共通して輝いて見えた。  フラッシュに照らされている、という物理的な意味ではなく、選ばれた彼らには相応に与えられている光なのだろう。  テレビの向こう側に映る景色に、感じるものはもう何もない。神経を逆撫でされることに疲れたのかもしれないし、本当に諦めがついたのかもしれない。  どちらが正しいのか、それともどれも正しくないのか、それすらもう分からないし知ろうとも思わなかった。  その時、かしゃん、と小気味良い音を立ててトーストが焼き上がる。飛び出てきたそれを回収する為、皿を持ってキッチンへと戻った。  テレビのスイッチは、その時に消した。  ──真夏のある朝。約三ヶ月前の話である。
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