hero

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 ヒーローとして魔獣と遭遇した時の対処法は心得ている。万が一襲われたとしても、身を守るくらいは造作もない。既に二十代も半ば、キャリアとしても十分のはずだ。  それは男も分かっているようで、彼は「そりゃあな」と言いながら立ち上がってアマネのいるテーブルまで来た。  身長百九十センチ越え、加えて肩や腕を中心に鍛え上げられた筋肉を持つまさに筋骨隆々といった言葉がふさわしい男だった。  白髪混じりの髪をオールバックにしているのは、その方が視界が確保出来て仕事をする時に思う存分暴れやすいからだと聞いたことがある。  とはいえ、まるで鉢巻きのように頭に手ぬぐいやタオルを巻いているのは、個人的には微妙である。年齢としては四十歳に入ったばかりだというのに、そのせいで更に老けて見えるからだ。  誰がどう見ても民間人には見えない、この男の名前は宮前力也(みやまえりきや)。アマネと同じヒーローである。 「だが、用心するに越したことはねえ。お前は俺と違って魔獣を殺せねえだろ」
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