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第一話 椿
その物語の始まりは
暖かい春の日差しが降り注ぎ
ひんやり北風が忘れ物を取りに来るような風が吹く
春が目覚めたばかりの
ある晴れた日の昼下がり
今日布団を干さなくてどうする！！
という近所の主婦達が
重たい布団と葛藤してる中
昔からその場所にある古びた屋敷の母屋の近くに
この物語の主人公になるはずの青年が一人立っていて
青年の目の前には
その肌を漆喰で綺麗に真っ白く染め上げ、頭を頑丈な木炭のように黒い瓦で守られた
古びた大きな蔵の頑丈な扉が静かに、入り口と言う名の大きな口を塞いでいた
実は朝の７時くらいからその場所に居る青年は
深海のような深い蒼い長着を黒い帯で縛り、その上にこれもまた黒い上着を羽織り
肩まである黒い髪の毛を風が撫でるたびに
先が赤く染まった耳が姿を表し
何を迷っているのか、何度も母屋に戻ろうとしたらしく黄色い大地には、彼の履いてるサンダルの足跡が複数記されていて
やっと決心をつけたらしい青年は
手に太陽の日差しに照らされ鈍く光る漆黒のような色をした柄の部分に椿の模様が描かれている鍵を、蔵と大きな扉を繋ぐ黒いこれまた椿の模様が彫られた和鍵にゆっくりと突き刺し回す
カチンとした音と共に和鍵の棒が抜けて
主人公が太陽の光に暖められた扉を静かに開いた
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