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青い扉の向こうには、ここと同じ、深い闇が広がっていた。
冷たい風が、ひゅうう……と音をたてて流れ込んでくる。
それは、赤い扉とは対照的な景色だった。
「おじいちゃん、真っ暗だよ……」
不安になってとなりを見ると、祖父は目を細めて笑う。
「大丈夫。ちゃあんと連れていってあげるからな。じいちゃんと一緒に、家へ帰ろう」
「だめ!! おじいちゃんの言うことを聞いちゃだめ! 赤い扉へ戻ってきて!」
「こっちだよ、春花……」
「違う、こっち! こっちよ、春ちゃん!」
「こっちだよ……」
「こっち!」
ふたりの声が暗黒の中でこだまし、目眩がしそうだった。
「お母さん……。ごめんね……」
本当は、赤い扉へ行きたいのに。もう、すぐそこに、我が家が見えているのに。
足が勝手に、青い扉のほうへ引っ張られていくんだ……。
「春ちゃん! 行っちゃだめ!! しっかりして、春ちゃん! 春ちゃん!」
私は、青い扉の向こう、暗く冷たい闇に溶けていった…………。
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