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シュステーマ・ソーラーレ計画
数百年前に、今はもう地図から消えてしまった異国で、太陽系を創ろうとした若者たちの話を知っているだろうか?
まだ地球が宇宙の中心と信じられていた時代の話だ。その若者たちの中には、高度な教育を受けている者は一人もいなかった。幼い頃から天涯孤独で日銭を稼いで暮らし、病を患っていた若者も大勢いる。
とても信じられない話だろう。だが、彼ら彼女らの中には、不思議な力を持っていた者が数人いたらしい。その力が、彼らの希望になった。ここに翻訳済みの資料がある。リーダーと思われる青年の日記だ。少し読もう。
”怒りっぽいカイは、炙られても火傷をしない。泣き虫のセドは、マッチほどの小さい炎を生み出せる。痩せっぽちのヘリオは金属を念力で少し曲げることができる。笑い上戸のエリスは触った雨粒を氷に変えられる。本当に、素晴らしい。僕は何もできない。リーダーなのに”
メンバーのほとんどは名無しだ。妙なことに、リーダーの名前も残っていない。他のメンバーが記した資料もあるが、なぜかリーダーの名だけ消えているか、読めない状態になっているんだ。
しかし、広場で何となく集まった若者達は、リーダーの青年が提案した夢のような計画に賛同し、見事に結束していった。
まず、数人の特別な能力を様々な試みと努力、協力で研ぎ澄ませていった彼らは、その能力を社会の中で活用するようになる。必要な物全てを揃え、星々の研究と開発、設計に集中できるようにしたんだ。
数十年後には、太陽系のプロトタイプが完成した。ミニチュア模型、とも言えるだろう。実は、その模型は、この大学の地下に保管されている。歓喜する様子を記したメンバーの日記も確認されている。
しかし、この後の記録は一切無い。それどころか、完成直後に、メンバーのほとんど全員が失踪している。
もしかしたら、彼らは本当にオリジナルの太陽系を創ってしまったのかもしれない。なんて、私は思ったりする。君たちは、どう思う?
教授の話が気になり、私は一人で地下の資料倉庫に向かった。どうしても、あの模型が見てみたい。
一つの正八面体を囲む正二十面体の連なる輪、さらにその輪の周りに正十二面体と正四面体、正六面体の輪が配置された銀の壁。暗い黄金色の立体パーツは、それぞれ握りこぶし一個分くらいの大きさだ。数珠の様に連なって、中心の正八面体を必死に守っているように見える。
太陽は、きっとあの正八面体の中に収まっているのだ。
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