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電子恐竜の涙は海へ
光る粒子だった頃の僕は、時間を進んだり戻ったりしながら旅を続けてきた。時間の向きを切り替えるたびに、大きな大きな雷を落としてしまったから、僕は今、こんな罰を受けているのだろうか?
一面の砂。足の裏が焼ける感覚。僕のゴツゴツした分厚い皮膚でも、太陽にたっぷり晒された砂の熱さにはかなわない。永遠と信じていた旅の終着点は、乾ききった砂漠だった。
足の裏を気にしながら、砂漠を彷徨い続けて、もうどれくらい経っただろうか。僕を歓喜させるものも、がっかりさせるものも、何も無い。過去に一度、嵐が来た。雨がたくさん降って、砂に大きな水たまりができた。
水面に映る、ギザギザした歯と太い後ろ足。僕は初めて恐竜の僕と対面して、腰を抜かしてしまった。
今日もゆらゆらと頭を揺らしながら、とぼとぼ歩く。
リンリンリンリンと、何かが甲高く鳴る音がする。僕は一目散に、その音源を目指して駆けた。
ドシドシドシドシと響く僕の足音。遠ざかる高い音。大きな涙の粒が、目尻から流れて止まらない。
ついに何も聞こえなくなって、僕は立ち尽くした。喉の奥から息を出す。叫んだつもりだったけれど、小さい声しか出なくて、余計に悲しくなった。
結局、その日も太陽は沈んで、暗く寒い夜を一人で過ごすことになった。星空を眺めながら、あの大きな水たまりを思い出す。あの水たまりは、海にそっくりだった。懐かしくて、干上がるまで見つめていた。
長い間、飲み食いしなくても砂漠を歩ける僕は、本当は恐竜じゃないのかもしれない。でも、きっと恐竜だろう。こんなにも寂しい気持ちは、生き物じゃなければ感じられない。
明日も歩こう。海を目指そう。そして、そこで何かを愛するのだ。
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