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case1
「どうちて?」
フラワーパークの中央にあるチューリップ畑の前で、幼女が小首を傾げていた。
繋いでいる父親の手をクイッと引いて、花を指さす。
「ねえパパ、どうちて? どうちて『あか・ちろ・きーろ』になってないの?」
「雛子。その歌で重要なのは、どの色もきれいだってことなんだよ。あそこ行く?」
「やっ! ひなこちゃんは『あか・ちろ・きーろ』がいい!」
幼女が「いやいや期」を爆発させ、父親はたまらず電話をかけた。
数分前、ぐずった乳児を連れて車へ戻った、幼女の母親に。
「ママ、雛子が」
「もう少しだけ頑張って」
「もう少しって、どれくらい?」
「桃花ちゃんの機嫌がよくなるまで」
電話越しに、乳児の泣き声が響いている。
父親は絶望をどうにか飲み込み、通話を切った。
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