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case2
フラワーパークを一周できるスミレの遊歩道を、白髪の女性がゆっくり、ゆっくり歩いていた。
隣には、男子中学生がひとり付き添っている。
「おばあちゃん、やっぱり車椅子」
「もう少しだけ、自分の足で歩きたいのよ」
そうは言っても、白髪の女性は苦しそうに「ふぅふぅ」息を吐いていた。
そこへ、きぐるみが現れた。大きな白いリスだ。
体をしきりに動かして、モジモジ、モジモジ落ち着きがない。
「あの、」
リスから発せられた男の声に、男子中学生と白髪の女性は目を見開いた。
「もう少し行ったところに、人力車が待機してます。よかったら、ご利用ください。今なら、香り袋と花言葉カードがもらえますので」
驚きで固まっていた二人は、リスの言葉に一拍置いて反応する。
「え、しゃべった」
「まあ、素敵ね」
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