10年前のお話

2/7
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 20時に駅前で会おうね。そう約束をした。  向かう途中でショーウィンドウのガラスの前に立ち、映っている自分の姿を確認しながら、赤いチェックのマフラーをギュッと結び直して、自分の髪を手ぐしで整える。1ミリでも多く可愛くみられたいから。  約束した時間の10分前についた。まだ来ていなかった。    今朝した言葉のやりとりをスマホで確認してみる。 「今日クリスマスだね! 会えるの楽しみ」 「バイトで遅くなるかも」 「イルミネーション間に合えばいいよ!」 「間に合うかわからない」 「間に合わなければ別れちゃうからね笑」  既読マークはついたけれど返事は来なかった。返事が来なくて少し不安になった。  私は言葉の最後に“ 笑 ”を面白くないのに、むしろそうなってしまったら悲しい事なのにその文字を入れてしまった。もし私がその言葉を受けとる立場だったら? そんな軽いノリで言えちゃうの?ってなって同じように返事を返さないかもしれない。  返事は来なかったけれど、待ち合わせ場所には時間通りに来てくれると思っていた。  スマホの画面を消すと暗くなった画面に映る自分の顔をみて、メイクが崩れてないか確認をする。  画面だけじゃ足りなくて、カバンから小さな鏡を取り出した。薄いメイクだけど普段しないから見慣れない自分が映っている。アイラインが崩れていないかチェックした。彼は気づいてくれるかな。微妙な私の顔の変化に。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!