モノローグ

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 やがて、偵察に行っていたカンタが戻って来た。 【若い女が結羽を見張ってる】 【そうか、若い女か…… 美人だったかい? 】 【そんなの知るかい! 結羽の美人がわからん】  カンタが呆れている。 【そりゃそうだ。愚問だったな、ワリィ】  片頬で笑いながら、しばし考える。   ――さて、どうしたものか…… ライブの度に見張ってるだけで、行動を起こさないつもりなのか…… 意図がわからないだけに薄気味悪い。女のストーカーか、それとも俺に振られて逆恨みしている女か。心当たりはないが、こういう場所で歌っているといろんな女に出会うからなぁ。どちらかと言えばあってもおかしくない  結羽は細身で長身の、いわゆるスマートに見える今風の青年だった。髪はやや長めのストレート。ひと目でミュージシャンとわかる格好。美系の俳優ほどではないが、少し話せば女性はたいがい魅了される。眺めるだけの美系より抱かれたいイケメンというところか。女性客からの誘いもしょっちゅうだった。  その時、カンタが叫んだ。 【あのコ、こっちに来る】 【えっ…… しょうがない、俺は気づかない振りをしてるんで、代わりに実況してくれ】  早速、カンタが実況を始めた。 【あのコ、リュック背負ってる。真っ直ぐこっちに歩いてくる】 【オイオイ、まさか刃物とか持ってないよなぁ? 】 【大丈夫、手ぶらだよ】  結羽は面倒に巻き込まれたくなくて、抱えていた愛用のギターを一旦置こうとした。
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