モノローグ

13/14
前へ
/342ページ
次へ
 数寄屋造りの迎門は木製の格子戸になっていて、その向こうに広い庭が透けて見えた。夜の8時を回っていたので、その向こうにある家屋は見えなかった。とりあえず玄関のインターホンを鳴らすと、ハ~イと中から女性の声。 「こんばんは。すみません、この家の娘さんを送って来た者です」  結羽ができるだけ怪しまれないように挨拶する。 「あらまぁ、ミネコさんをですか? 」  そう言うと、相手は返事も聞かずにインターホンを切ってしまった。 「え~、どうなってるんだこの家の奴らは! 」と不満が声に出た。  しかも、インターホンを即切りした割には門を開けるまでに時間がかかり過ぎる。よっぽどのろまな女性なのか、玄関から門までの距離があるのか……   「お待たせしました。どうぞお入りください」  ようやく姿を現した50代後半のおばちゃんが扉を全開にして、中に入るよう促す。  ――いや、もうここでおさらばしたいのだが……   こちらの思いを無視して、どんどん奥へ戻って行く。 「アンタさぁ、もう意識戻ってんだろ? 自分の足で歩いて行きなよ。いつまで俺に面倒かけてんだよ」  半分切れながら、結羽は抱えている女に文句を言った。 「気づいてた? いいじゃない。ここまで付き合ったんだから、最後まで付き合ってよ」  女が目をつむったまま、いけしゃあしゃあとほざいた。文句を言いながらも、とりあえず足は奥へと向かう。 「嫌だね、アンタの払ったお金でサービスできるのは、ここまでだ。もういいだろ、俺は帰るから」  そう言うと、立ち止まり今にも彼女の身体を投げ出そうとした。 「待ってよ。本題はここからだから。力を借して、お金もちゃんと払うから」
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加