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結羽は半信半疑でコンビニ店に入り店員を探した。雑誌コーナーで物音がするので、足を向けると若いスタッフとオーナーらしき男が雑談に興じていた。
「あのぅ~、この近くのシロガネさんの家に行きたいんですが」と声をかける。客を見てスタッフがツカツカと寄ってきた。
「シロガネさんですか? 」
「はい。娘さんを送ってきたんですが家が分からなくて」
客の言葉に頷きながら入口に向かおうとする。
「あ、あの。それで、肩を貸してあげないといけないんで、この荷物を少しの間預かってもらえませんか? こちらだったら預かってくれると聞いたんで」
スタッフはシロガネ家とは親しいようで、すぐに荷物を預かるとレジカウンターの下に置いた。それから「そんなに遠くないですよ~」と、一緒に駐車場までついてきて、女の様子を見て「大丈夫ですか? 」と声をかけた。
それから、一人で連れていくのが大変そうだと思ったのか、「手伝いますよ、一緒に行きましょう」と、抱えあげるのを手伝い片方の肩を貸す。
二人で女に肩を貸して歩くことになった。完全に眠っているわけではないらしく、少しは歩こうとする意識があるようで、その分こちらにかかる負荷が軽減されていた。これで、重い女だったら絶対、コンビニに置いてきてただろう。何とか10分くらい歩くと、それらしき家の門の前に辿り着いた。
「では、私はここで店に戻りますね」と若いスタッフが結羽に断りを言う。
「助かりました。本当にありがとうございました」
結羽が丁寧にお礼を言うと、「ミネコさんの彼氏さんですか? うらやましいです」とにっこり笑って、帰って行った。
――だから、違うって。どいつもこいつも勝手に彼氏にするんじゃねぇ!
結羽の機嫌は悪くなる一方だった。
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