「博士と妻、禁断の夫婦愛」

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「博士と妻、禁断の夫婦愛」

「今どこにいますか?」 「…………」 「あなたー、今どこにいますかー?」 「……はっ、気を失っていたようじゃ」 「ああ、あなた、良かった!無事だったのね」 「ああ、どうにか無事のようじゃ」  ………… 「今、あなたはだいたいどのあたりですか?」 「そうだなあ、わしの計算ではそろそろ出発地点、うわー揺れ始めたー」 「いやー、こちらも揺れ始めました」 「いかん、当時のデータによるとこの揺れが始まって10分もたたないうちに…うわ……うわー激しい横揺れだ」 「ギャーこっちも。こっちはドスンドスンってうわー、あなた助けて、すっすごい縦揺れ」 「なにっ、はじめっからそんなに激しかったのか、うわー」 「あなた、もう耐えられない。私はゴールで待ってますから。ええっ、私は大丈夫、ここは死守していますから、お願いよお願い。必ず来てね」 「はあはあ、もっもちろんじゃ」 「ああああ、絶対ですよ」 「ぐおー負けるもんかー」 「ぎょえー愛してるわあなたー」 「わしもじゃー」 「ああーん」 「いいーい」 「ううー」 「ええー」 「おおおおお」 「うわーものすごい轟音だー」 「こちらはけたたましい高音が響いてきたわ」  <以下略>  ………… 『たとえ肉体が朽ち果てようと、私たちは永遠に夫婦として仲睦まじく暮らしていきたいの』 『わしもじゃ。わしらの想い必ずや現実のものとしてみせるぞ』  …………  かくして幾つになっても仲睦まじい博士(87歳)とその妻(87歳)は長年かけて完成した「タイムマシン兼ミクロ化マシン兼水陸両用車」×二台に分かれて互いの体内に入り込み、遡ること60年前の二人の新婚初夜の日、 d4118c0f-d55e-4235-9fb9-1a764ce6618f 博士1億もの並みいる強豪相手にゴール、そして疲れ果てた博士をしっかと妻が受け止めて……。  それから十月十日  オンギャー  産まれた赤ちゃんは誰ともなくひとり微笑んだそうです。
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